滑り止めのない箸で食うラーメン
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ミルクポーションをいたずらに舐めたことがある。
小さいプラスチックの容器を振り続ければ、生クリームになるんじゃないかと思っていた。
そう信じて、日がな一日振り続け、夕方にまったく泡立ってすらいないミルクポーションを飲んだ。
ケミカル感とクリーミーが両立することもあるのだ。
味と勘違いしてしまうほど、舌触り。
ミルクポーションはすごい。
単体で舐めてもうすーい薬品の味なのに、コーヒーに入れると途端にミルクの味になるのはなぜだろう。
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「教会はこちらです。」
看板の矢印の通り、左側に顔を向けると、教会があった。
傾いた土地にプレハブの建物が、居心地悪そうに建っていた。
今にも崩れそうな佇まいのそれは、ところどころペンキが剥げており
こんなところに本当に神がいるものかと、少し疑った。
「ようこそ」
玄関のドアにかけられたラミネートだけが、やたらと新しかった。
昔京都に住んでいた。
家の近くに異常に安い中華屋があり、何度も入ってみようと思ったが、店構えがボロく、食品サンプルもぼやけてみえて何となく近寄りがたかった。
しかしなぜか、共産党のポスターだけは新しかった。
私はその店を「共産党ラーメン」と呼んでいた。
大学卒業前に1度だけ行った。
味は普通だった。
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台所にはさかなが住んでいる。
そのせいで私は皿が洗えないのだ。
プラスチックの容器がベットのそばに積みあがる。
今日はゴミの日だった。
ゴミ袋にまとめて、玄関に向かう。
靴の上に冬眠中のクマが住んでいて、履けない。
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高温の油に濡れるパスタを、君は見たことがあるだろうか。
揚げられたパスタの周りにまとわりついたスパイスは何が入っているんだろう。
味の素のあじがする気がする。知らないけど。
ああいう手数の必要な食べ物は好きだ。
他には、
・居酒屋のコーンバター
・マクドの枝豆コーン
など。
特に意見のない会話に入れないとき、一粒ずつ食べる。
考えるふりができる。できている気がする。
タバコと一緒だよ。おいしいだけましかな。
そうしてあっという間に「ドリンクラストオーダーですが」と遠くで聞こえる。
先に帰りますねと言って帰る。
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少し前の話だが、「自由さ」に対する勘違いがあったことを認めておいたほうが良い気がする。
例えば自分のオリジナル魔法技、これはどこまでも自由だが、今思えば制約あってこその詠唱だった。
「受胎告知」という必殺技がある。
1ターン消費して全回復できる。
せっかく考えて行ったのにターン制のゲームではなかった。
なのでまったくの無駄になったが気に入ってよく文字を眺めている。
その時は知る由もなかった。半年後、梅田のスープストックTOKYOで使うことになるとはね。
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睡眠を促進するためのTシャツを作ろう。
夢よりはるかに劣る現実を見るために。
5月だ。
どくだみの花が咲きはじめている。