ボトル

good night mare

地球儀の外側にも酸素がある件wwww

 

 

 気づけば空には2つの月があった。目が開けられないほどまばゆい光を放つ、青白い球体。おそろしく寒い。一体ここはどこなんだ。
目の前に広がる砂漠のような景色。しかし、砂は浅く、地面は凍ったように固く冷たい。


 はだしのまま、少し地面をけってみる。固い地面につもった塵のような細かいそれは、目の高さまでひろがって、煙みたいに舞い上がった。


「おかしいでしょ、こんなの。」
心の中でつぶやく。だって絶対おかしいもん。だってついさっきまで……。

 

 


 ついさっきまで私は……夏の終わりのもう近い、日本にいたはずだ。
友人と駅の地下のアウトレットセールにいっていたのだ。
思い出しながらあらためて、自分の姿を眺めてみる。
お腹はすいていないし、のどが渇いている様子もない。
確かランチはオムライスだったなあと記憶を手繰る。
ふと右側をみると有名店のタピオカミルクティーが飲みかけのまんま砂の上においてある。


「食料はこれだけか。」
砂漠の真ん中で、唯一の食料がタピオカだなんて。
手に取ってまじまじとみつめて、そのまま指先から腕へと視線を流してゆく。


 エメラルドグリーンのワンピースを着ていた。うなじに手をやるとまだ、値札が付いたままだ。これは自分のものではない。
友人とランチにオムライスを食べた後、近くの雑貨屋を回って、お目当てのタピオカにならんで……。


 とりとめのない考え事をするとき、私はそわそわと落ち着かなくなり、ひとりで散歩にでる。
そうすると頭が働くのだ。じっと机の前で止まっていたって、どうしようもない時がある。
今はまさにそんな状況だ。でも、砂漠で迷子の時って、やっぱりその場から動かないほうがよかったりするのかしら。


ちょっと迷ってから、手に持っていたプラスチックの容器をもう一度地面に戻した。
これのまわりを大きく回りながら考え事をしようじゃないか。名案だ。


 そして私ははだしのまま、歩き始めた。
砂は火山灰のように細かくさらさらしていて、柔らかい。
2つの月が背中を追いかけてくる。ひらけた屋外なのに、影が2つあるのは少し不思議な気持ちになる。ひらひらおどるスカートの裾が、こんなにもかろやかだなんて。自分以外誰もいないステージで、素敵な衣装を身にまとう。不安と孤独に包まれながら、まるで春風をまとうバレリーナだ。


身体が温まってくる。脳に酸素がいきわたる。
このエメラルドグリーンのワンピースの正体は?