ボトル

good night mare

映画館で映画を観よう

 

 人生で一度もやったことがないことを一つでも減らしたい。

 

 私は今まで映画館で映画を見たことがほとんどない。

 

 なぜか。


生まれ育った家庭のせいにしてしまえばそれまでなのだが、それ以外にもいくつか理由がある。それは1つの映画に1800円払うのがもったいない気がするだとか、見たい映画がないだとか、そもそも習慣がないだとか。


 とにかく映画に限らず「最新のもの」にさして興味がない私は、これまで自ら映画館に足を運ぶことなどそうそうなかった。

が、残業がなく、20時までに必ず仕事が終わる、固定休のあるバイトに受かってから心境が変わってきた。


 やることがなさすぎるのだ。


今までなら平日も土日も関係なく、その日の人員によっては残業をし、家に帰っても仕事の続きをしたりという(フリーターらしいといえばそうなのかもしれないが)、およそ振り回されっぱなしの生活だった。それが急に毎日朝9時に起き、支度をして10時に家を出て、会社について朝ご飯を食べ、11時にタイムカードを押し、15時に昼ごはん、20時には仕事を終え21時には帰宅、という完ぺきなルーティンを平日にこなす生活に変わった。


 何か趣味を見つけなければこのまま20代の前半が終わる。
その焦燥感に苛まれた結果、冒頭の話に戻る。

 

 

 


 そうだ、映画観よう。

 


 最初に述べた通り、映画館で最新の映画を観るためには1800円もかかる。
たっけ~。たかすぎて高杉晋作になるわ。


結局、レディースディにレイトショーを観に行くことで解決した。(1200円)


毎週水曜日、21:00以降の映画を選ぶ。
月に4回、最新映画を観に行く。なかなかオトナの気分でワクワクする。


 手始めに「僕の好きな女の子」という映画を観た。
ピース又吉が原作の短い映画だ。
理由は90分だったから。120分もじっとすわって画面見てるの耐えらんなくないですか?

 


 せっかくの映画記念日だ。2020年8月19日。華々しくいきたいものだ。
生まれて初めて一人でキャラメルポップコーンとコーラを買った。一度独り占めしてみたかった。
 新型コロナウイルス感染症予防の観点から、シアターの椅子は1席ずつ空いている。
それが本当に心地よかった。薄暗くて涼しいシアター内に一人、また一人と私以外の客が入ってくる。みんな一人で観に来ているんだ。盗撮防止の注意喚起も、上映中の諸注意も、昔見たものとはずいぶん変わっていたけれど、内容はほとんど変わっていなかった。


 シアター内がいっそう暗くなって、スマホの電源を落としても、私の前の席と両隣にはただの一つも人影がなかった。快適、快適。

 

 


 かくして私の一人映画デビューは幕を閉じた。
映画館で映画を観ると次に観たい映画が決まる。
上映が終わればそそくさと家路につく。終電まであと20分かそこら。

 


 そのあと決まって見る映画の夢が楽しみだ。

 

 

 


「おもしろき こともなき世を おもしろく 」


 今の俺ならそう詠むね。