ボトル

good night mare

ピング

 

 人生で一度もやったことがないことを一つでも減らしたい。

 

 べランピングという言葉があるらしい。ベランダ+グランピング=べランピングという造語のようで、最近だとチキンラーメンのCMなんかでも使われている。この自粛期間中に生まれた言葉かと思いきや、実は結構前からあるっぱい(ソースなし)

 


 もともと登山やキャンプに興味はあったが、1日中動きっぱなしなのがプレッシャーであまり行かない。運転免許もなければ車もない。


学生の頃「燻製研究会」から始まった「アウトドア料理研究会」の血が騒ぎだす。
あのころ少しずづ買い集めたちいさなキャンプ用品たちがこっちを見ている。

 


 仕事中にふと思う。
次の休日に、久々に比叡山まで行こうかな。
山のふもとで燻製だけやって、1人で5時間くらいキャンプしようかな。
そうしよう、絶対楽しい。やるぞー!

 


 やる意思が固まったとたん、もう家の近くのコーナンにいたし、必要なもの全部買ってたし、家に着くなりすべてを開封したし、ベランダに置いた。それがべランピングの始まりだ。このスピード感についてきてくれ。

 


 私は祖父と2人で暮らしている。当然祖父にも声をかけねばなるまい。


「今日の晩御飯はベランダで食べるけど来る?」
と聞くと、多少面食らったような顔をした後、「了解!」と元気に返事が返ってきた。

 


 夕方5時半、2人でベランダを掃除する。
西日がまぶしく、それでいて風はすっかり秋の体温だ。


私が想像していたよりも祖父はウキウキとしていたらしく、私がキッチンで食材の準備を終えベランダに持っていくころには十分な照明と椅子がすでに準備されていた。

 


妹にも連絡を入れ、狭いベランダで火をつける。
ビールと三ツ矢サイダーで乾杯。
あらかじめ用意しておいた枝豆を口に入れながら料理ができるのを待つ。年季の入ったラジオから、今流行りの曲がガシガシの音質で流れてくる。9/26の夜は今始まった!


 岩塩の板の上で肉を焼くとうまいという噂は本当だったし、白身の魚を焼くとしょっぱかった。
シャウエッセンと6Pチーズはスキレットをつかって燻製に。しばらく使っていなかったコッフェルは十分仕事をしてくれた。


今回は米がないので炭水化物が欲しくなった時のために、と思いジャガイモでグラタンを作っていたのだが、みんな満腹になってしまったようである。これは明日食べる。

 


 一通りすべての食材を調理し終わって、一息つく。ふーっと吐く息と一緒に、肩の力が抜けていく。
ぽんぽんのおなかを丸出しのまま,ぼーっとベランダで座って過ごす。火の前で仕事をした後の秋風が心地よい。できればこのまま眠りたかった。
べランピングの良さは、そこが家ということだ。すべての汚れ物は明日片づけることにして、風呂に飛び込む。

 


 次はメスティンをかって米を炊きたいなあ、とか炭火をおこして焼き鳥をやるのもいいなあとか、午前中から初めて昼ごはんの時間にべランピングするのもいいなあ、とか。
野菜がもっとほしかったなあとか、ちょうどいいサイズのまな板って難しいよなあとか。
湯につかりながら次のことを考える時間が何よりも至福でよい気分。

キャンプグッズの動作確認もできたのがよかった。

 


 もう少し寒くなったら、焼酎の湯割りでたのしみたいな。