帰り際の封筒
久しぶりに街へ出た。
友人のシロクマが、近々大阪へやってくるとのことで、連絡をくれたのだ。
シロクマはスマートフォンを持たない。北極には、黒電話がひとつあるのみなんだそうだ。それを他のシロクマや、青い魚や飛ばぬ鳥たちと譲り合って使っている。
大阪は冬とはいえ、だいぶ暑い。シロクマは大丈夫なんだろうか。流氷のように涼しげなシロクマが目の前でとけてしまうのは嫌だ。
などと考えながらぼーっと梅田をあるく。
阪急、大阪梅田駅でシロクマと合流。
いつも大きなからだを、ぎゅうぎゅうと電車に詰め込んでやってきてくれる。平日の朝から会うなんて、お互い無職でもなければできない。
シロクマとメロンソーダをのんだ。
「いいね、これ。」
彼は本当にメロンソーダが好きで、こだわりも強い。必ずアイスクリームがのっていないと、ダメなんだそうだ。
それも、のせたて。
ウエイトレスが盆にのせて持ってきたメロンソーダを、いそいそとすくう。
メロンソーダと、バニラアイスの境目の凍ってしゃりしゃりした部分が地元の氷みたいで好きなのだと、昔に言っていた。
彼は、口下手だ。
私と会うときに、必ず手紙をくれるのだが、手紙さえも、
「おれは、文字にじしんがないから。」
といって、簡単なイラストだけをいれた封筒を渡してくれる。
決まって、帰り際に。
「今日は泊まる場所、あんの」
「いや、ネカフェに」
「そう、またね」
次また、あえるといいね。
あとで封筒を開けるね。