レストランで食事、憧れすぎてるの巻
レストランってホントに怖い。
場所に魅力を感じないとか、食に興味がないとか、お金がもったいないからという理由で行きたくないわけではない。どちらかといえば、行きたいにきまってる。
恐怖!
私の中にある全部のコンプレックスを刺激してくる空間。
まずはお手頃?なランチから行ってみようと思ったが、行く前から疲れてくる。
お店は何にも悪くない。私がホントに全部悪い。せめて個室にすればよいのかもしれない。
何をすればスマートでどうふるまえばふさわしいのかが全く分からない。
完全アウェイ。
まるで転校初日、前に通っていた学校の制服を着て教壇に立つかのような違和感。
料理は好き。むしろ食には強い関心があるほうだし、こだわりはないが「それを食べたことがある」という経験はいつでもしたいと思っている。
が、それを上回る不安があまりにもでかくそびえたつ。
例えば、服装。
ふだんよりちょっとおしゃれにしたい気持ちがあるが、周りから浮かない程度に自分を飾り付けるのは本当に難しい。多分周りの人は何にも思わないのかもしれないが、「コイツ浮かれてるな~。」と思われるのがめっちゃ嫌。
実際浮かれてるのは事実だけどあまりにもフランクな感じで行って「コイツ浮かれてるのを隠したくてわざとフランクにしてきたのかな?ダッサ~。」と思われるのもマジ、ホント嫌。
誰かと行くとして、デートっぽく仕上げるとして、手ごろなワンピースって何?
レストランに着ていけるような美しく見える、上質でシンプルなワンピースは触るのも怖い。
ワンピースのほうから「お前に俺は似合わんから着ないでくれ」と拒絶されているようにすら感じる。
こういうのを延々考えすぎるせいで、結局から回ったヘンな格好で行くような気がする。
誰も私に似合う、かつドレッシーすぎずカジュアルすぎずちょっといいとこ行くのにぴったりなワンピースのことを教えてくれない。深みにはまる。教えてもらおうという考えさえダサすぎて泣きそう。
そして、少ないサンプルと記憶を頼りに書くのでふわっとなるが、なんかよくわからんけどちょっといいとこってこう、入り口にちょっとした廊下?みたいなのがあって、食べるとこ?とコートとかカバンを預かってくれるとこ?がちょっと分かれていたりしてもう気遣いがあるじゃないですか、その読まれっぷりがすでに怖い。あと昼なのにバリ暗い。
私の恐怖を読み取ってるんだ。建築士を呼んでくれ。このレストランの空間をデザインした怖い人を今すぐ呼んでくれーーーーっ!!!!
私の「コート預けてもらってるとこみられるのやだな~。」「店に入るときに鳴るドアの鈴の音で自分に視線が一気に集まる瞬間マジで苦手だな~。」という心理を読んで先手で対策を打ってくるな。怖いよ。
そしてお次はテーブルマナーだ。こちとら箸もぎりぎりじゃい。
最悪スプーンの1本くらい余ったってまあいいのだが、私の食べ方ではどんなに気を付けてもナイフとフォークと皿がうるさい音を立ててしまう。立ててしまいません?私は完全な無音を目指しているので、すこしでも音が鳴ると途端に「やば、今の音確実にほかの客に聞かれたんじゃ!!!???!???!?!」とストレスになってしまいもう味がしない。
周りを見回すともちろんこちらのことなど気にしている様子の人などいないのだが、そうすると今度は楽し気な会話や談笑、レストラン全体から聞こえてくる金属の擦れる音が私の耳元で大きくなりはじめる。
すべての食器をシリコンで包んでくれーーーーーっ!!!!!
食べ終わった後のナフキンはくしゃくしゃにしたほうがいいとかも先教えてほしい。
できればコートを脱いで預けてるときとかに「うちでは食べ終わった後膝に置いてたやつはくしゃくしゃがいいと思ってますんで……」とさりげなくいっといてほしい。できれば。
それから、これが一番の恐怖なのだが、自分の挙動が不安すぎる。
ここまでの愚痴を全部読んだ人ならわかると思うが、とにかく余裕がない。
椅子の位置が気になりすぎすぎたり、一気に水を飲み干してしまったり、緊張でトイレに行きまくってしまうだろう。出てくる皿に乗った料理を大急ぎで平らげて、一緒にいった相手に呆れられるかもしれない。
食事と、目の前にいる人とのおしゃべりを楽しむだけの場所だとわかっていても、これだけいろいろ考えながら食事をしていては口数も減る。いつもと違う場所でヘタなこと言ってしまわないか、それが怖い。
それに、相手に恥をかかせるのもすごく怖い。もう一緒に食べにきたくないと思わせないような振る舞いを完璧にしたいのに、考えれば考えるほどスプーンを床に連続で落としまくり、パンくずをまき散らし、皿の上のソースをぬぐう一つ一つの動作さえ知らない人に監視されているかのように居心地が悪い。写真も撮っていいのかわからない。
会計ってその場で割り勘にしちゃダメか?おいどうなんだ、教えてくれ。
そして帰り際、預けていたコートとカバンを返してもらうがこれも嫌。
コートを受け取ろうとすると、一向に渡してくれないのだ。不思議に思って一緒に来た相手を見ると、服屋で店員さんが試着するときのように着せてもらっている。
なるほどと自分もそれにならい着せてもらうのだが、あまりに丁寧なのでタイミングが合わない。
手をこれ以上広げたら顔を殴ってしまわないだろうか。想像するだけで「すみません。」と謝りそうになる。
気をもみにもむ2時間のフルコース。(もみもみ)
たぶん感覚がくるって異常な速さで食ってるから滞在時間が1時間とかになってる。疲れるでホンマ。
サービスが一流であればあるほど何も味わえず、人の目が気になり、クッタクタ。
家でフルコースをお取り寄せすることも考えたが、本当は「彼とレストランでランチをしたの。」みたいな実績解除したいじゃないですか。誰にも言わないけどね?ちょっとやっぱ……うれしいじゃないですか?正直言って。照。ディナーでもいいんですけど!照。
でも正直これ、別にラーメン屋とか行っても思うんですよね。
髪型とか、服に汁が飛んでないかとか、並び方はこれでいいのかとか、初回で「普通」以外を頼んだらちょっと嫌われたりしないかとか。水はセルフだろうか、うわー、張り紙とかもないじゃん、セルフじゃないのに勝手に取りに行って怒られたらやだな〜、おしぼりもういっこもらいたいけど店員さんみんな忙しそうだし頼めないな、とか。いちいち考えすぎか?
380円のちっせ~~~チャーシュー丼だけ食って帰っちゃダメか?ダメなんだろうな。
私がレストランを経営しようかな。
チュートリアルレストランみたいな名前にして、入るところから食事のマナー、お見送りまで全部をキッザニアみたいに体験できる的なヤツ。どうですかね?
まずは調理師の免許をとってその足でフランスへ飛び、一流レストランで修業して帰国、日本伝統の文化と修行で身についたフランス仕込みの腕前でスパイスカレー屋かラーメン屋を経て、ちょっとバズらせたあとあっさり店をたたみ、チュートリアルレストランを経営しよう。
「マナーを全部フリップで指示してくれる3つ星レストラン」としてヒルナンデスで紹介されることだろう。
そしてそのレストランで築いた巨万の富を全額投資して、「無法地帯レストラン」もつくる。こっちは世界最高峰の料理をマナー全無視し、手づかみでいただくことのできる世界で一つだけのレストランだ。もちろんすべて個室。無法地帯なので皿を持ってトイレに行ってたべてもかまいません。あなた方を怖がらせるような周囲の目など存在しないので、安心して来店してほしい。
そうして私はいつの間にか老い、経営も料理も後を継いでくれる有望な若者に託すことだろう。
そうしたらあなたとまたレストランに行きたいね。